登山ガイドで気象予報士の矢野です。
2018年6月の月イチ机上講座メインテーマは「パッキング」です。
利用頻度から物の配置を決めていくのが一般的かと思いますが、私は「ザックの重心配置」を優先します。イケてないザックの重心配置は「楽でバテない歩行技術」を邪魔します。この違いが重要なので、歩行時の体重移動やバランス保持にザック重心がどう影響するか、参加者おひとりずつにザックを背負い、歩いて登り降りして、上体を前後左右に傾けて、3通りのセッティングを比較体験いただきました。
(私が誘導したわけでなく)比較体験の結果として「肩甲骨の間の、なるべく身体に近いところに重心がくる配置」が登山の動きの中でしっくりくるということでした。そうしてパッキングの目指す方向性が掴めたら、次は皆さんお待ちかねの「荷物をザック内にどう配置したらよいか」です。
まずはザックの中身の確認から。富士登山を想定した装備です。飲み物は麓からすべて担ぎ上げる前提で4リットル。
これを、理想の重心配置になるよう入れます。ザックの上半分、背中に近い側を水(飲料)の定位置とすれば、ほぼ理想の重心配置となります。
理想の重心配置に満足気な私。みなさんも再び背負い、最終確認していただきました。
もう1つのテーマ「夏山登山装備」から2つほど。
まずはガスコンロのガス残量について。「使いかけのガス缶のガス残量がわからないから、予備のガス缶を持っていくのだが…」というお悩み。これについては、購入直後からガス缶全体の重量を使用のたびに測定・記録していくと「ガス残量」および「前回のガス使用量」が把握できることをご紹介しました。
もう1つは私の装備品にあった「水を入れた小さいペットボトル(300ml)」について。これは「傷の洗浄」のために救急セットと合わせて常備しているものです。
傷口に付着した泥や小石を洗い流すには水をビューっと勢いよくかけてあげる必要があります。かけ流すだけでは落とせません。ここで活躍するのが、事前に加工して救急セットに忍ばせている「穴を開けたキャップ」です。キャップを付け替え、ペットボトルを押しつぶすと穴から水が勢いよく出ます。その水圧により泥や小石は洗い流されます。
予定していなかったファーストエイドの話題も飛び出しましたが、「真水」と「穴を開けたキャップ」を持つ重要性を理解いただけたのではと思います。
地味だけど大切なことはあります。1つでも新たな気づきをお持ち帰りいただけたなら幸いです。
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